訪日中国人旅行客が急回復するなか、宿泊施設の集客チャネルはOTAと検索広告から“SNSシフト”へ向かっています。
特に小紅書(REDNOTE)は「旅行前プランニング」「旅ナカ行動」「旅後レビュー」を一気通貫でカバーできる唯一のプラットフォームと言われ、ホテルマーケティングの成否を握る存在です。
本記事ではホテルSNS担当者の皆さまに向け、成功事例と再現プロセスを交えながら、アカウント開設から運用代行活用までを網羅的に解説します。

目次

1. 中国旅行市場と小紅書の台頭
2. ホテルが小紅書を優先すべき３つの理由
3. 旅行 vertical のアルゴリズム最適化
4. ホテル運用フレームワーク「5Eサイクル」
5. KPI・指標設計のベンチマーク
6. 成功事例３選と学び
7. バズを生む10のコンテンツフォーマット
8. KOL・KOC戦略と契約の勘所
9. 予約貢献度の測定とROI最大化
10. 失敗パターンと回避策
11. 自社運用か運用代行か
12. よくある質問(FAQ)
13. まとめ

1. 中国旅行市場と小紅書の台頭

1-1. 訪日需要はポストコロナでV字回復

日本政府観光局(JNTO)の速報値によると、2024年の訪日中国人は546万人と前年比270％増へ回復しました^出典。
円安も相まって、宿泊費・消費額ともに上振れが続く見通しです。

1-2. 情報収集チャネルはUGCへシフト

iResearchのレポートでは、旅行計画時に利用するアプリで小紅書 = 1位(63.4％)、
従来主流だった馬蜂窝(58.3％)や携程(55.7％)を上回る結果となりました。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)の信頼度がOTAの星評価より高いというのが現実です。

2. ホテルが小紅書を優先すべき３つの理由

• 1) “画角”優位性
  部屋ツアー・朝食ビュッフェ・ルーフトップバーなど、視覚的バリューが高くコンテンツ化しやすい。
• 2) 越境決済との連携
  2024年12月アップデートで飛猪・Trip.comリンクが動画内でワンタップ遷移可能に。
• 3) 長期的SEO資産
  投稿は検索結果で半年以上生存し、季節需要の際に再浮上する。

3. 旅行 vertical のアルゴリズム最適化

3-1. 旅行カテゴリ特有の評価係数

小紅書開発者会議(2024)の資料によれば、旅行カテゴリーは保存率とコメント率の重みが通常より高く、

$$TravelScore = 0.4 \times Save + 0.35 \times Comment + 0.25 \times Like$$
の比率で初期Pool判定が行われます。
「後で行くためのメモ」として保存される行動がコンバージョン兆候と見なされるためです。

3-2. ハッシュタグとロケーションピンの二重最適化

投稿内で位置情報を設定すると、近隣スポットを検索するユーザーのフィードにも優先表示されます。
タグと位置情報をセットで運用することで、リーチは平均1.6倍に伸長します(弊社データ)。

4. ホテル運用フレームワーク「5Eサイクル」

段階	目的	主要KPI
Explore	潜在客へリーチ	リーチ数・保存率
Engage	予約検討へ育成	コメント率・DM数
Experience	宿泊体験をUGC化	宿泊者UGC件数
Extend	リピーター化	再来訪予約率
Evangelize	ファンが口コミ伝播	KOC投稿拡散

各EフェーズごとにコンテンツタイプとKOL用件を変えることで、予約導線を自然に形成できます。

5. KPI・指標設計のベンチマーク

指標	推奨値	チェックポイント
保存率	4％以上	ルームツアー動画で上げる
コメント率	1.5％以上	Q&A形式で促す
DM転換率	0.8％	多言語運用が鍵
予約貢献率	15％	トラッキングリンク必須

6. 成功事例３選と学び

6-1. 事例①：東京ラグジュアリーホテルA

・施策：日本在住中国人KOL(フォロワー45万)と「窓からの夜景LIVE」を配信。
・結果：保存率6.2％、コメント1,800件、ライブ視聴中に公式ECで予約50室。
・学び：夜景やアフタヌーンティーのFOMO=見逃し恐怖を煽る構成が有効。

6-2. 事例②：京都町家旅館B

・施策：ハッシュタグ #隐世旅宿 で“隠れ家”訴求。ゲストが撮影した和朝食写真をリポスト。
・結果：UGC投稿314件、OTAレビュー★4.9へ向上、閑散期稼働率＋22％。
・学び：KOCを主役にし、館内撮影スポットをスタッフが提案。

6-3. 事例③：大阪ビジネスホテルC

・施策：チェックイン機自動化動画を縦型30秒で投稿、ハッシュタグ #商务差旅神器。
・結果：保存3,400件、コメント「深夜でもチェックイン可」がバズワード化、Alipay決済比率が45％→74％。
・学び：機能特化型ホテルは課題解決を前面に出すと反応が良い。

7. バズを生む10のコンテンツフォーマット

1. Room Tour 60秒 ─ 部屋のドアを開ける瞬間を1カット目に。
2. 朝食ビュッフェASMR ─ 音で“臨場感”を演出。
3. Check-in to Check-out Vlog ─ 滞在全工程を倍速で。
4. Staff Behind-the-Scenes ─ 客室整備やシェフの仕込み。
5. 季節限定プラン告知 ─ 桜・紅葉・雪景色を活用。
6. 周辺観光スポット案内 ─ マップ挿入で保存率UP。
7. 価格比較&費用内訳 ─ 透明性が信頼を生む。
8. 客室タイプ診断クイズ ─ コメント参加型でアルゴリズム加点。
9. ライブQ&A ─ 週1回の定期配信で顧客不安を解消。
10. リピーターインタビュー ─ ファンが語る“推しポイント”。

8. KOL・KOC戦略と契約について

8-1. KOL選定基準

・フォロワー10万〜50万の“ミドル層”がホテル業界は最もROI高
・保存率5％以上、旅Vlog投稿比率60％以上が目安

8-2. 料金相場

東京圏でフォロワー20万の場合、

$$費用 = 宿泊提供(¥30,000相当) + 出稿料(¥80,000) + 成果報酬(予約1件あたり¥1,200)$$
もしくは、20〜30万円。

8-3. 契約チェックリスト

• 二次利用権(広告・自社サイト)を明記
• 競合ホテル排他期間＝60日以内
• 消費税・サービス料の扱いを中国語で記述

9. 予約貢献度の測定とROI最大化

9-1. トラッキングリンクの設定

Trip.comや自社予約エンジン側でUTM＋Partner IDを発行し、プロフィールリンクと投稿内QRへ埋め込む。

9-2. モデルケース

・小紅書経由セッション 12,300
・直接予約 820件　・ADR ¥24,000

$$Rev = 820 \times ¥24,000 = ¥19,680,000$$
広告・KOL費用合計 ¥3,950,000

$$ROAS = \frac{¥19,680,000}{¥3,950,000} = 498\%$$

10. 失敗パターンと回避策

• 誤訳ハッシュタグ ─ 意図しない層へ拡散、保存率低下。
• OTAリンクのみ依存 ─ 手数料増でROAS悪化。自社予約導線を並走。
• 季節外れ投稿 ─ 検索流入はあるが予約転換低い。季節タグ必須。

11. 自社運用か運用代行か

• 自社運用向き：ADR高くストーリー性豊富なラグジュアリーホテル
• 運用代行向き：多拠点展開で投稿量がボトルネックになるチェーン系

代行会社選定ポイント：
・旅行業界KOLネットワーク　・Trip.com API連携実績　・中国語&日本語のバイリンガル運用

12. よくある質問(FAQ)

Q1. 投稿は中国語だけで十分？

A. 日本語フレーズは“異国情緒”として保存率を高めるため、簡体字＋日本語の併記がベストです。

Q2. ホテルアカウントの投稿頻度は？

A. 週2〜3回を推奨。繁忙期前はデイリー投稿で加速します。

Q3. 中国の旅行法規制に注意点は？

A. 宿泊価格表示は税・サービス料込みで明示、キャンセルポリシーを簡体字で記載する必要があります。

13. まとめ

小紅書(REDNOTE)はホテルにとって、認知獲得から予約までをワンストップで実現できる最重要SNSです。
成功の鍵は、旅行カテゴリ特有の保存率重視アルゴリズムを理解し、「5Eサイクル」でフェーズごとのKPIを設計すること。
本記事を参考に、魅力的なコンテンツと確実なトラッキングを組み合わせ、ROIを最大化してください。
リソース不足や中国法規制に不安がある場合は、運用代行の活用が最短ルートとなります。

出典：JNTO『訪日外客統計2024』、iResearch『中国旅行消費動向2024』、小紅書開発者会議資料2024 ほか
※本記事は2025年6月時点の公開情報を基に執筆しています。最新の法規制・アプリ仕様は公式発表をご確認ください。